那須川天心 対 ジェーソン・モロニー:格闘技好きが解説!試合結果と戦術分析、今後の展望は?

那須川天心ジェーソン・モロニーの対戦は、日本ボクシング界のみならず世界のボクシングファンから大きな注目を集めました。

本記事では、両選手のプロフィールや経歴、直接対決の詳細な分析、試合後の評価と影響について解説します。

那須川天心とジェーソン・モロニーのプロフィールと経歴

那須川天心のプロフィール・経歴・スタイル

那須川 天心(なすかわ てんしん)は1998年8月18日生まれ、千葉県松戸市出身のプロボクサーです​。幼少より空手やキックボクシングで才能を発揮し、プロキックボクサーとして42戦無敗(キックボクシング戦績)という驚異的な記録を残しました​。

2016年からは総合格闘技イベントRIZINでも活躍し、その名を全国に知らしめました。

那須川は華麗な足技と俊敏な動きから「キックの神童」と称され、2018年大晦日にはフロイド・メイウェザーとのボクシングエキシビションマッチも経験しています(※エキシビションの敗戦は公式戦績に含まれません)。

2023年4月、満を持してプロボクシングに転向。同年4月8日にボクサーデビューを果たしました​。

以降無敗を維持し、2024年7月までの第4戦では世界ランカーを相次いでKO・TKOで撃破。

さらに2024年10月の第5戦では判定勝ちでWBOアジアパシフィックバンタム級王座を獲得しています​。

帝拳ボクシングジムに所属し(元キック時代の所属ジムはTARGET/TEPPENジム)、2025年2月時点でプロボクシング戦績は6戦6勝(2KO)です​。

サウスポー(左ボクサー)として構え、多彩なコンビネーションと切れ味鋭い左ストレートを武器に戦います。

元キック王者らしくステップワークが軽快で、角度をつけた攻撃や瞬時の飛び込みなどスピードとテクニックが持ち味です​。

防御面でも動きの速さで被弾を減らし、要所でカウンターを合わせるクレバーさも光ります。

那須川は「ボクシングでも世界チャンピオンになる」という大きな目標を掲げており、キックボクシングから培った経験を活かして急速にボクシング界で台頭しています。

ジェーソン・モロニーのプロフィール・経歴・スタイル

ジェーソン・モロニー(Jason Moloney)は1991年1月10日生まれのオーストラリア出身プロボクサーです​

ビクトリア州ミッチャムで生まれ育ち、2014年にプロデビューしました(アマチュアから転向)​

双子の弟アンドリュー・モロニーもプロボクサーであり、弟は元WBA世界スーパーフライ級王者というボクシング一家です​

ジェーソン・モロニー自身は元WBO世界バンタム級王者であり、2023年5月にフィリピンのビンセント・アストロラビオとの王座決定戦を制してWBO王座を獲得しました​。

プロ通算戦績は2025年2月時点で31戦27勝(19KO)4敗。27勝中19のKO勝利を持つことから分かるように、攻守両面に優れたハードパンチャーです。

身長165cmのオーソドックス(右構え)ファイターで​、「Mayhem(メイヘム、騒乱)」の異名が示すように積極的なファイトスタイルが特徴です​。

モロニーは中距離からのジャブと強烈な右ストレート、左右のフックでプレッシャーをかける攻撃型ボクサーです。

ボディブローも巧みで、スタミナと手数で相手を圧倒する戦いを得意とします。

一方でスピードに秀でた相手にやや苦戦する傾向も指摘されており、2020年には当時無敗のモンスターこと井上尚弥に挑戦しKO負けを喫しました​。

また、2024年5月には東京で武居由樹(たけい・ゆき)に判定負けし、保持していたWBO世界王座から陥落しています​。

こうした経歴から、モロニーは世界トップクラスの強豪と戦ってきた経験豊富なベテランといえます。

井上尚弥戦や武居戦で露呈した課題である高速サウスポーへの対処が、那須川戦での焦点となりました。

両者の関係性と試合結果の詳細分析

対戦までの経緯と関係性

那須川天心とジェーソン・モロニーは、それまで直接の対戦や交流はありませんでした。

しかし、モロニーにとって日本での試合はこれが3度目となります。

彼は2019年に元世界王者の河野公平をTKOで破り、2020年に井上尚弥に挑戦、2024年には武居由樹とも対戦するなど、日本人選手との戦績は2勝2敗となりました​(那須川戦前は2勝1敗)。

一方、那須川にとってモロニーはプロボクサー転向後最強の相手であり、初の元世界王者との対戦です。

無敗を守る新星と再起を懸ける元王者という図式で、この一戦は早くから大きな話題となりました。

試合は2025年2月24日、東京・有明アリーナで開催されたイベント「Prime Video Boxing 11」のセミファイナルとして行われました​。

モロニーにとっては武居戦に続く再来日であり、この試合に勝利して再び世界戦線に返り咲きたい思惑がありました​。

那須川陣営にとっても、元世界王者を破ることで一気に世界タイトル挑戦への道を切り開く狙いがあり、まさにお互いのキャリアが懸かった一戦となりました。

試合の流れと結果

試合序盤、那須川は緊張感の漂う中でそのスピードとテクニックを発揮します。

第1ラウンド、立ち上がりからサウスポーの那須川は軽快なフットワークでリングを回り、左ジャブとフェイントを織り交ぜながら様子を探りました。

モロニーもプレッシャーをかけ、いきなり強打を振るってきます。開始直後こそモロニーの右ストレートが鋭く飛び、那須川は一瞬ヒヤリとさせられましたが、ダウンを奪われることはありませんでした​。

那須川はすぐに落ち着きを取り戻し、自身のリズムを作ります。

初回終盤には持ち前の素早い出入りから左ストレートをヒットさせ、モロニーの出鼻をくじくことに成功しました。

第2ラウンド以降、那須川が試合の主導権を握ります

巧みなステップイン・アウトでモロニーのパンチを外しつつ、的確なカウンターを返しました。

特に那須川の左ジャブはモロニーにとって脅威となり、モロニーは前に出たいものの那須川の俊敏な動きに手を焼きます​。

さらに那須川は上下への打ち分けや多彩な角度からのパンチで攻撃を組み立て、随所で観衆を沸かせました。

第3ラウンドには那須川の放った強烈な左ストレートがモロニーにクリーンヒットし、モロニーはぐらつきながらも耐えます​。

この場面で那須川は一気に畳み掛けるべく連打を見せましたが、モロニーも老練なクリンチワークでピンチをしのぎました。

中盤に差し掛かり、第5ラウンドまで那須川優勢で進みます。

那須川は攻めては角度を変えて離れるヒット・アンド・アウェイ戦法で、モロニーに的を絞らせません​。

観客からは那須川のテクニカルな動きに拍手が起こり、元キック王者がボクシングでも通用する姿を印象づけました。

しかし第6ラウンド、試合が大きく動きかけます

モロニーがここで意地を見せ、序盤からプレッシャーを強めると、鋭いワンツーを那須川の顔面にクリーンヒットさせました​。

この一撃で那須川は明らかに動きを止められ、ロープ際に下がります。

モロニーはチャンスとばかりに連打をまとめ、那須川をあと一歩でダウン寸前まで追い込みました​。

会場からは悲鳴にも似たどよめきが起こり、那須川は初めてプロのリングで大きな危機を迎えます。

那須川はここでクリンチと巧みなディフェンスで耐え、何とかダウンを回避しました。

インターバルで体勢を立て直すと、第7ラウンドから再び持ち味を発揮します。

モロニーも畳み掛けたいところでしたが、この頃になるとスタミナ消耗も見え始め、動きに粗さが出てきました。一方の那須川は息を吹き返し、第8ラウンドには再度ペースを握り直します​。

鋭いピボット(軸足旋回)からのカウンターでモロニーの攻撃を切り返し、終盤にはモロニーの前進に合わせて左アッパーや右フックを的確にヒットさせました。

第9、10ラウンドでも那須川は落ち着いて戦い、モロニーのラストスパートを巧みにいなしつつポイントを重ねていきます​。

試合終了のゴングが鳴ると、判定は**那須川天心の3-0圧勝(ユナニマス・デシジョン)**となりました。

公式採点は2人のジャッジが97-93、1人が98-92で那須川を支持​。

10ラウンド中7~8ラウンドを那須川が取った計算で、大差の判定勝ちです。

モロニーも最後まで意地を見せ、第6ラウンドの猛攻や終盤の反撃でいくつかラウンドを取ったものの、試合全体を通じて主導権を握ったのは那須川でした。

勝因は那須川のスピードとテクニックによるアウトボクシングが奏功したこと、そして危ない場面でも冷静さを失わず立て直したメンタル面の強さにあります。

一方のモロニーは持ち味のプレッシャーファイトで盛り返す場面もありましたが、那須川の機動力を最後まで攻略しきれず、序盤~中盤にリードを許した点が敗因となりました。

戦術分析と専門家の評価

この試合の戦術面を振り返ると、那須川のフットワークとカウンター戦術が鍵を握っていました。

那須川は序盤から終盤まで一貫してサークリング(リングを回る動き)を多用し、モロニーの前進に対して横方向の動きでかわす場面が目立ちました。

常にポケット(相手の射程圏)から斜めに抜けることで被弾を減らしつつ、逆にモロニーが無防備になった瞬間を逃さず高速カウンターで応戦しています​。

第5ラウンドまでに見られた那須川の一方的な攻勢は、まさに出入りのスピードを活かしたボクシングクリニック(お手本のような試合運び)とも評されました​。

特に那須川の左ジャブと右フックのコンビネーション、時折混ぜるボディへの左ストレートはモロニーにとって脅威となり、モロニーは思うように前に出られませんでした​。

しかし第6ラウンドにはモロニーの反撃が炸裂します。ここではモロニーが得意とするストレート主体のコンビネーションがハマりました。

距離を詰めて放った右ストレートから左フックの連打で那須川をぐらつかせ、那須川がクリンチで耐えると一旦間合いを取って再びワンツーを打ち込むなど、モロニーは経験豊富な老かいさを発揮しました。

このラウンドは明確にモロニーのポイントと言え、那須川にとってはプロ転向後初めて劣勢に立たされたラウンドだったでしょう。

那須川は被弾後すぐさまガードを固めてクリンチし、ダメージの回復に努めた点は評価できます。

追撃に出たモロニーでしたが、那須川の懐に飛び込んだ際に巧妙に体を絡め取られてしまい、決定打を与えきれませんでした。

このあたりは那須川のクレバーなディフェンス戦術が光った場面です。

モロニーからすれば、もう一押しでダウンを奪えるところまで迫りながら取り逃した形で、第6ラウンド以降に焦りが出た可能性があります。

試合後、専門家やメディアもそれぞれ分析を発表しました。

海外のボクシングメディア「Boxing News Online」は「那須川は洗練されたフットワークと角度をつけた攻撃で年長の元王者を終始翻弄した」と報じ、那須川のテクニックを称賛しています​。

また米国系のボクシングサイト「Bad Left Hook」は、この試合を「26歳の那須川にとってキャリア最高の試練だったが、見事に飛躍へのテストに合格した」と評価し、那須川のスピードがモロニーの経験値を上回ったと分析しました​。

同サイトの非公式採点では96-94で那須川勝利(公式よりやや接戦評価)だったものの、「印象的なパフォーマンスでコンテンダー(有力挑戦者)の地位を確立した」と絶賛しています​。

一方で「モロニーも最後までハートを見せた。特に終盤の2ラウンドは意地を見せて取った」という指摘もあり​、両者の健闘を称える声が多く聞かれました。

事実、第9・第10ラウンドをモロニーが意地で取り返したと見る向きもあり、勝敗は明確ながら内容はエキサイティングで互いにリスペクトを勝ち取る一戦だったと言えるでしょう。

日本のメディアも「那須川天心が世界レベルの実力を証明した」と大々的に報じました。

試合直後に行われた会見で、那須川は「1試合で何試合分もの経験をさせてもらえた。

この中で新たな課題もたくさん見つかった」と振り返り、今回の勝利に満足せず更なる成長を誓っています​。

モロニーに関しても「さすが元王者。終盤までタフで強かった」とその実力を称え、那須川は敬意を示しました。

モロニー本人のコメントは伝えられていませんが、試合後に両者が健闘を称え合う握手を交わす姿が印象的でした。

ボクシング界での評価と影響

試合後の評価と国際的な影響

この試合後、那須川天心の評価は一段と高まりました

無敗の新星が元世界王者を相手に大差判定勝ちを収めたことで、国内外のボクシング関係者から「もはや世界挑戦も時間の問題」との声が上がっています。

那須川は今回の勝利で戦績を6戦6勝とし、WBO世界ランキングでもトップ10入りが確実視されています(試合前はWBOバンタム級1位のランカーでした)。

実際、試合後にはWBO世界バンタム級王者である武居由樹がリングに上がり、那須川との日本人同士の世界戦実現を示唆する場面もありました​。

武居由樹も元キックボクシング王者からボクシング転向し世界王者となった経緯があり、**「キック出身世界王者対決」**という興味深い図式で注目が集まっています。

那須川も会見で「世界にふさわしい相手と戦いたい。強い相手ほど燃えるタイプなので大歓迎だ」とコメントしており​、年内にも世界タイトルマッチ実現を目指す方針です。

海外メディアの論調も概ねポジティブで、「那須川天心は単なる話題先行のキック出身選手ではなく、本物のボクサーだ」という評価が定着しつつあります。

モロニー戦で見せた内容がテクニック、メンタル双方で優れていたため、今後バンタム級戦線で要注意の存在となったと言えるでしょう。

特に井上尚弥がバンタム級を去り他階級へ転向した現在、新たなスター候補として那須川への期待が高まっています。

那須川自身、「二刀流で世界制覇」(キックボクシングとボクシング両方での世界王者)という壮大な夢を掲げており​、その実現に向けて確実にステップを踏んでいる状況です。

那須川天心・モロニーそれぞれの今後の展望

那須川天心の今後は、何と言っても世界タイトル挑戦が現実味を帯びています。所属する帝拳ジムの本田会長も「6月に世界ランカーと前哨戦を行い、11月に世界王者と対戦させる計画がある」と明言しており​、那須川陣営はモロニー戦勝利直後から次なるビッグマッチに動き出しています。

具体的にはWBO王者の武居由樹との日本人対決が最有力視されますが、他にもWBA王者の井上拓真(井上尚弥の弟)やIBF王者エマヌエル・ロドリゲスなど各団体の王者が候補に挙がるかもしれません。

いずれにせよ、那須川にとって世界挑戦は目前であり、仮に実現すればプロボクシング8戦目での世界戴冠という快挙に挑むことになります。

那須川は「自分は強い相手ほど燃える」と語る通り​、今後も強敵との対戦を望んでいるため、ファンにとってもエキサイティングなマッチメイクが続くでしょう。

一方、ジェーソン・モロニーの今後は再起への道のりになります。

今回の敗戦でモロニーは2連敗(2024年武居戦と2025年那須川戦)となり、一時は掴みかけた世界王座戦線から後退を余儀なくされました。

ただモロニーはまだ34歳とバンタム級ではベテランの域ですが、引退を考える年齢ではありません。

豊富な経験と実績を持つだけに、コンディションを立て直せば再び世界ランカーに返り咲く可能性は十分あります。

実際、モロニーは那須川戦前のインタビューで「この勝利でキャリア第2章が開く。もう一度世界王者に返り咲くための重要な一戦だ」と意気込んでいました​。

結果的に敗北となったものの、試合内容では意地と実力を示しています。

今後は地元オーストラリアで再起戦を行い勝利を重ねていくか、あるいは日本で武居由樹や那須川天心へのリベンジ戦線に残る道も考えられます。

双子の弟アンドリューもまだ現役であり、お互い刺激し合いながらの復活を目指すでしょう。

モロニーにとって鍵となるのはモチベーションの維持と適切なマッチメイクであり、もう一度世界タイトル挑戦権を得るには数戦の勝利が必要となります。

ファンからは「また日本に戻ってきてリベンジを!」という声援もあるため、モロニーの巻き返しにも注目です。

日本ボクシング界への影響

那須川天心対ジェーソン・モロニー戦がもたらした日本ボクシング界への影響も見逃せません。

まず、この試合で那須川が元世界王者を破ったことにより、日本のボクシング熱がさらに高まりました。

従来から日本には井上尚弥を筆頭に世界王者が複数存在し「バンタム級王国」とも称されますが、那須川という異色の経歴を持つスター候補の台頭で層の厚みが一層増した印象です。

井上尚弥が去ったバンタム級戦線で、井上拓真・武居由樹・那須川天心という新たな日本人トリオが世界を席巻する可能性も出てきました。

特に那須川と武居は共にキックボクシング出身であり、異種競技からボクシング頂点を目指す物語はメディアやファンの関心を強く引いています。

また、那須川の存在はボクシングの新規ファン獲得にも寄与しています。

もともと那須川はキックボクシングや総合格闘技で若年層を中心に圧倒的な人気があり、そのファンがボクシング中継や会場に流入しています。

実際、有明アリーナでの試合当日もキック時代からのファンが多数駆けつけ、那須川の入場時には大きな歓声が上がりました。

こうしたクロスオーバーな人気は日本ボクシング界にとって追い風であり、他競技からの転向選手育成やイベントのエンタメ性向上など、新たな展開を促しています。

さらに那須川は「キックとボクシングの二刀流で世界王者になる」という前例のない挑戦を掲げており、これが実現すれば日本のみならず世界の格闘技史に名を刻む快挙です。

彼の挑戦は若い格闘家たちにも刺激を与え、「競技の壁を越えて活躍する」一つのロールモデルともなっています。

モロニー戦で見せた那須川の強さと課題は、本人のみならず日本のボクシング指導者たちにも多くの示唆を与えました。

スピードや技術で勝る選手が、経験豊富な強打者にどう対処するかというテーマは、他の日本人選手にも共通する課題です。

那須川が第6ラウンドの危機を乗り越えた戦いぶりは、後進のボクサーにとって教科書的なお手本と言えるでしょう。

同時に、「世界で戦うには一瞬の隙や気の緩みが命取りになる」ことも示され、那須川自身も「新たな課題が見つかった」と語っているように​、更なるレベルアップが求められます。

このように本試合は日本ボクシング界全体のレベルアップにも繋がる貴重な経験となりました。

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